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料理も食事も修行と考える精進料理からの学び

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料理を作り、食事をいただくという日々の習慣。忙しい時には、つい手を抜いてしまうこともあるはず。しかし、毎日の食事がいい加減になれば、体や心の健康が損なわれ、日常生活にも影響してくる結果になることも。一智和尚が教えてくれた「食材を選び、料理を作り、食事をいただく」という一連の流れの中には、料理や食事の大切さをあらためて考えさせてくれるような、たくさんの学びが散りばめられていた。

 

旬を感じる食材の選び方

主に食材の調達は「托鉢(たくはつ)」で行われる。托鉢とは、僧侶が檀家さんの家を回り、必要な分の食糧を分けていただくこと。「走り・旬・名残」のおいしい食材がいただけるという。集めた食材は、台所近くに祀られる、食糧調達と火の仏様・韋駄尊天に供えてから使う。托鉢は修行であるが、足を運んだ先の檀家さんとの触れ合いを通して、互いに良い関係を築ける面もあるのだとか。もちろん、いつでも希望する食材が手に入るわけではないし、余り物の時もある。どんな食材にも感謝をし、いかに工夫して活かすかが腕の見せ所だという。

旬を感じる食材の選び方

手間を惜しまない作り方

料理を作ることも修行。手作りを大切にし、手間を惜しまない。曹洞宗には、自分の身を削りながら、みんなのために一生懸命やるという教えがあるのだそう。例えば、平(ひら)と呼ばれる炊き合わせは、出汁を引き、食材を一つずつ煮て、一つずつ味付けをすることから時間がかかる。他にも胡麻豆腐は、すりこぎで胡麻をするのだが、胡麻から油が出るまで2時間すり続けることもあるのだとか。また、精進料理は肉や魚を用いない代わりに、野菜ならいくらでも使って良いわけではなく、普段は捨ててしまうような皮や葉、切れ端まで感謝の心を持って使う。

手間を惜しまない作り方

食材に感謝する食べ方

禅宗では、「喫茶喫飯(きっさきっぱん)」という言葉があり、食事も仏様の行いとして大切にされている。喫茶はお茶を飲むこと、喫飯は食事をいただくこと。食事をする時は、始めにお茶を飲み、みんなとわかり合う。次に、食事と真摯に向き合い、命をいただくことに感謝する。最後にお茶を飲み、良い事も悪い事もあったかもしれないが、全てを流すのだという。「食卓を一緒に囲む人と食べる早さを合わせる、正しい箸の持ち方をする、食べた後に片付けをする」というようなことは、食事をいただく側の心得として持ち合わせていたいことだとも話してくれた。

食材に感謝する食べ方

 

◆こだわり過ぎない心も育てる

今回のインタビューを通して、一智和尚の「こだわらない」という言葉が印象的だった。例えば、このやり方しか自分にはできないと考えるのではなく、みんながしていることを当たり前にできるようになってから、自分にはこれがあっているから、これをしようと考える。「ハイブリット精進料理」に当てはめれば、精進料理の教えをもとに、自分なりのやり方を見つけてきたという。こだわりの心を捨ててみることも大切。これは、典座教訓(てんぞきょうくん)の中にも記されている「三心(さんしん)」の中の「大心(だいしん)」の教えにもつながるのだという。「三心」の教えには、作る喜び、もてなす喜びを忘れないという「喜心(きしん)」、相手の立場を想って懇切丁寧に作る老婆親切の「老心(ろうしん)」も記されている。